物理工学輪講第二
6月11日
[注意事項]
輪講第二の「題目」・「要旨」は発表の1週間前までに office[at]ap.t.u-tokyo.ac.jp 宛てに送付して下さい。
発表日
2024年6月11日(火)14:55〜16:55

Aグループ

発表者名 西尾 祐希人
指導教員名 木村 剛 教授
論文題目 極性バルク結晶における非相反伝導現象
要旨 非相反伝導現象は電流印加方向の正負で電気伝導度が異なる現象であり、並進対称性の破れた接合や界面において発現が期待され、pn接合が代表例として挙げられる。一方、接合を構造に持たない均質固体においても空間反転対称性の破れに起因した非相反伝導現象が観測されており、注目を集めている。本発表では、バルク無機結晶において初めて非相反伝導現象が観測され、さらに非相反伝導測定がスピン軌道相互作用といった電子バンドパラメータを定量的に直接評価する手法にもなり得ることが提案された論文について紹介する。
発表者名 小林 光
指導教員名 木村 剛 教授
論文題目 方向二色性を利用した電気トロイダル効果の観測
要旨 物質中の分極、磁化、といった物理量は、従来それと同じ対称性を有する外場(電場、磁場)によって誘起、制御される。しかし、マルチフェロイクスの分野では対称性の異なる物理量、外場間の交差的な応答が議論されており、その代表例が分極と磁場、または磁化と電場の結びつきによる交差応答である電気磁気効果である。本発表では、まずこの電気磁気効果について紹介する。その後、近年議論されている新たな交差応答: 電場印加によりトロイダルモーメントが誘起される電気トロイダル効果を、光の入射方向によって吸収係数が変化する現象である方向二色性を利用して観測した研究を紹介する。

Bグループ

発表者名 鷲川 紗弥
指導教員名 高橋 陽太郎 准教授
論文題目 ワイル半金属における非線形光学効果
要旨 光エネルギーを電流に変換するバルク光起電力効果は、2次の非線形光学効果であり、その特徴から「異常な」光起電力効果と捉えられていた。その代表的な発生機構である、量子幾何学的観点を導入したシフト電流と、トポロジカル物質であるワイル半金属を用いたシフト電流の観測例を紹介する。
発表者名 玉腰 勇司
指導教員名 杉本 宜昭 教授
論文題目 Imaging two-dimensional generalized Wigner crystals
要旨 この研究では、WSe2/WS2モアレヘテロ構造における2次元ウィグナー結晶の実空間イメージングが行われた。ウィグナー結晶とは、電子が低密度なとき、クーロン相互作用が支配的になることで形成される結晶である。電子の結晶のため刺激に弱く、従来の手法では間接的にしか測定できなかったが、研究者たちは、結晶を破壊することなく直接観測する手法を開発した。
発表者名 上田 和樹
指導教員名 杉本 宜昭 教授
論文題目 自発的な原子スケールでの2次元磁気スキルミオン格子
要旨 磁気スキルミオンとは、トポロジー的に保護された渦状の磁気構造である。本発表では、自発的な基底状態としての磁気スキルミオンの存在を、Ir(111)面上のFe単原子層のスピン偏向走査型トンネル顕微鏡(SP-STM)を用いた観察と、拡張ハイゼンベルクモデルを利用した考察と、第一原理計算による構造計算を組み合わせて明らかにする論文を紹介する。