物理工学輪講第二
5月14日
[注意事項]
輪講第二の「題目」・「要旨」は発表の1週間前までに office[at]ap.t.u-tokyo.ac.jp 宛てに送付して下さい。
発表日
2024年5月14日(火)14:55〜16:55

Aグループ

発表者名 田口 啓太
指導教員名 Maximilian Anton Hirschberger 准教授
論文題目 Anisotropic Magneto-Thermopower in a short period Helimagnet(短周期らせん磁気構造における異方性磁気熱電効果)
要旨 ゼーベック効果やペルチェ効果に代表される熱と電荷の相互変換(熱電効果)は、エナジーハーべスティングの観点からも極めて重要な概念である。特に電流が熱流を誘起するペルチェ効果を用いれば、p型n型半導体の接合面において冷却が可能である。近年、強磁性体の熱電効果の異方性に注目することで、接合なしの単一の物質においてペルチェ冷却が実現された[1]。一方で強磁性体を用いた冷却デバイスは、小さな異方性熱電応答、複雑なデバイス構造が必要であるなどの問題を抱えている。本発表では、らせん磁性体を対象とし、磁気伝搬ベクトルQが生み出す異方性を用いた新規局所冷却技術を提案し、対象とするGd系金属間化合物のデータと合わせて議論を行う。
[1] K. Uchida et al., Nature (引用)
発表者名 田中 優樹
指導教員名 Maximilian Anton Hirschberger 准教授
論文題目 Spinless 3D Dirac semimetal: R8CoX3 (R = rare earth / X = Al, Ga, In)
要旨  トポロジカル半金属は縮重の形や縮重度によりディラック半金属、ワイル半金属、ラインノード半金属に分類される。こうした分類の中で、スピン軌道相互作用の弱いディラック半金属に関しては未開拓である。一例として2次元のグラフェンがあるが、特に3次元についてのこうした物質の先行研究はほとんどない。
 スピン軌道相互作用の弱い3次元ディラック半金属の候補の一つは、R8CoX3(R=rare earth / X=Al、Ga、In)である。R8CoX3は空間反転対称性を持たないが、ディラック点は分裂を起こさない。これは、R8CoX3が属する点群C6vの互いに異なる2次元既約表現の直交性に由来する。R8CoX3は様々な興味深い特徴を持っている。例えば、La8CoAl3は6 Kで超伝導転移を示す。私の研究の主なテーマは、R8CoX3を合成し、その性質を解析することである。

Bグループ

発表者名 岡野 修平
指導教員名 山本 倫久 教授
論文題目 WSe2/WS2モアレ超格子によるハバードモデルのシミュレーション
要旨 WSe2/WS2モアレ超格子でのクーロン相互作用の大きさ、ハーフフィリング状態における磁性、相転移が起こるフィリングの値は、三角格子におけるハバードモデルの計算結果と一致することが実験により判明した。
発表者名 小崎 陽友
指導教員名 山本 倫久 教授
論文題目 Observation of the Kondo screening cloud
要旨 磁性不純物を含む金属において、低温極限では局在磁気モーメントは多数の伝導電子により遮蔽される。これらの電子は磁性不純物の周囲に雲のように広がる。この状態は近藤雲と呼ばれており、量子コヒーレンスの広がりである。今回紹介する研究は半導体の量子ドットを用いて近藤雲の広がりを実験的に捉えたものである。
発表者名 廣橋 克馬
指導教員名 山本 倫久 教授
論文題目 準粒子「レビトン」
要旨 通常、導体中への電圧パルス入力は電子とホール双方の励起を伴う。しかしローレンツ型パルスを入力するとホールの励起を伴わない単一電子励起を起こすことができ、これを「レビトン」と呼ぶ。