駒場での講義Lecture in Komaba

2024年度 Sセメスター

物理学汎論

主題科目
全学自由研究ゼミナール
曜限
火曜5限

授業の目標、概要

物理学は、力学、熱力学、電磁気学、量子力学、…等といくつもの科目にわけて講義されることが多いが、実際は人類の膨大な思考の積み重ねによって、一つの統一された学問を形成している。そこで本講義では、歴史と最新の発展をふまえて、物理学の全体像を三部構成で俯瞰することを目標とする。

まず第一部では、相対性理論を解説する。時間の遅れやローレンツ収縮などの不思議な現象を通して、時空や対称性といった物理学の基本的な考え方を学ぶ。

第二部では、「光子」を題材にして量子力学をゼロから学び、ミクロな世界の物理法則が如何にマクロな世界とは異なっているかを議論する。さらに、量子暗号や量子テレポーテーションなど、量子力学の性質をフル活用した最先端の量子情報技術の紹介を通して、量子力学をより深く理解することを目指す。

最後に第三部では、統計力学について解説を行い、マクロな自然現象がミクロな粒子の集団的振る舞いによってどのように記述されるかを述べる。さらにフェルミ粒子やボーズ粒子といった異なる統計性をもつ粒子の集団的振る舞いの違いを示すことで、低温状態で現れる超伝導や超流動といった多彩な物性の発現を理解することを目指す。

授業計画

  1. 相対性理論 時空の幾何学
    慣性系と時空の対称性、ローレンツ変換・時間の遅れ・ローレンツ収縮、物理法則の対称性、一般相対論の入門など
  2. 量子物理学 ミクロな世界の法則
    確率振幅、ヒルベルト空間、不確定性原理、シュレーディンガーの猫、量子暗号、エンタングルメント、ベルの不等式、量子テレポーテーション
  3. 統計力学 ミクロな要素からマクロな現象の理解
    カノニカル分布、自由エネルギー、分配関数、フェルミ粒子、ボーズ粒子、超伝導、超流動など

量子コンピューター入門

総合科目E
物質・生命工学基礎ⅠB
曜限
水曜5限

授業の目標、概要

量子コンピューターの研究は、微細加工技術が進歩し、情報処理を担う「素子」が原子レベルに近づきつつある今日、当然の流れと言えよう。「素子」が原子レベルに近づくと、その動作はニュートン力学ではなく量子力学という運動法則に支配される。そこでは、アインシュタインとボーアの論争に代表されるシュレーディンガーの猫状態やEPR相関(一種のテレパシー??)が実際に起こる。量子コンピューターでは、これらの摩訶不思議な「量子効果」を用いて、情報のやり取りや情報処理を行う。この講義では、量子コンピューターの原理と現状についての入門的な講義を行う。

物理のための数学ゼミ

初年次
ゼミナール
理科
曜限
木曜3限

授業の目標、概要

物理学では、様々な現象の中に法則性を見いだして、それを数学的に記述します。また、その数学から予想される現象は、実験的に確かめられます。こうした過程の中で、それまで思いもしなかった応用が見つかることがあります。例えば、量子力学の応用としての量子コンピュータなどです。
この授業では、基礎となる数学を学び、物理の記述にどう生かされるのかを調べ、受講者同士の議論を通して理解を深めます。文献の検索、発表資料の作成、科学的な内容でのコミュニケーションの経験を積みます。最終的には、4名程度のグループに分かれて、興味のあるテーマを自ら設定し、他の受講者の前で発表してもらいます。物理に関連していれば基本的にどんなテーマでもよいので、面白い発表を期待しています。

初年次
ゼミナール
理科
曜限
金曜1限

授業の目標、概要

スマートフォンやパソコンなど、身の回りには数多の電子機器があり、私たちの生活を支えています。このような科学技術の発展には、物理学が大きな役割を果たしてきました。例えば、半導体の進歩には、数式や物理像による動作原理の理解や新技術開発が不可欠です。また、省エネルギーの鍵となる超伝導現象は、実験的・理論的研究によって機構の解明が進み、今やその発現温度は室温に到達しつつあります。
本授業では、物性物理学とその基礎となる数学を学びます。4-5人のグループに分け、物理に関するテーマを設定し、グループワークを行います。受講者間の討論や文献検索を通して内容を理解し、背景、意義、目的、解説、展望をまとめ、プレゼンテーションによって他の受講者にわかりやすく伝える手法を学びます。

2024年度 Aセメスター

物理をエンジニアリング

総合科目
現代工学基礎Ⅱ
曜限
木曜5限

講義内容

物理学とエンジニアリングは互いに切っても切れない関係で発展してきました。産業革命に刺激されて発展した熱力学、電磁気学の方程式から生まれた電信技術、ドイツ鉄鋼業から生まれた量子力学、など歴史を繙くとその例には事欠きません。そして現代、その関係はどのようになっているのでしょうか?この講義では、身近だけれども不思議な現象を紹介するところから始めて、その謎解きとその奥にひそむ物理を解説し、さらに現代科学技術との関係までのストーリーを下記の4つのテーマについてそれぞれ「読み切り」で示します。そして、物理がエンジニアリングに「応用される」というだけの関係ではなく、エンジニアリング自体が物理学を変革してゆく様子を皆さんにお伝えします。

  1. 未来材料
    サステイナブルな社会へ
  2. 量子技術
    量子をつくる、はかる、つかう
  3. 光の物理学
    光と原子の物理学―レーザーで原子を冷やす
  4. 理論物理学の挑戦
    基礎方程式の力

ノーベル賞に学ぶ物理工学

主題科目
学術フロンティア講義
曜限
金曜5限
初回開講日
10月4日(金)

授業の目標、概要

近年のノーベル物理学賞の多くは、磁性や超伝導などの物性物理学、量子光学、量子情報、ソフトマターなど「物理工学」と呼べる分野での受賞となっている。これらの受賞内容を学ぶことは、物理工学の歴史や今後の展開を知るのにいい機会になると考えられる。そこで、過去のノーベル物理学賞から物理工学分野に関連の深い受賞テーマをとりあげ、その物理的背景や受賞後の発展などを含めて、各テーマを専門とする教員陣がわかりやすく解説する。

授業のキーワード

ノーベル物理学賞、物理工学、物性物理学、量子光学、量子情報、ソフトマター

授業計画

工学部物理工学科の教員による、以下の13回の授業日程を計画している。なお、都合により日程の変更もあり得る。

日程 担当教員 担当テーマ 受賞年 受賞者
10/04(金) 芝内教授 高温超伝導 1987 Bednorz,Müller
10/11(金) 川﨑教授 半導体物性 2014 Akasaki他
10/18(金) 石坂教授 光電子分光 1981 Bloembergen他
10/25(金) 香取教授 精密レーザー分光 2005 Hall, Hänsch
11/01(金) 武田准教授 量子情報 2012 Haroche, Wineland
11/08(金) 求教授 トポロジカル相 2016 Thouless他
11/15(金) 有馬教授 中性子散乱 1994 Brockhouse, Shull
11/29(金) 杉本教授 走査トンネル顕微鏡 1986 Binning, Rohrer
12/06(金) 古川准教授 ソフトマター 1991 de Gennes
12/13(金) 吉岡准教授 ボース・アインシュタイン凝縮 2001 Cornell他
12/20(金) 平山准教授 対称性の破れ 2008 Nambu
12/27(金) 島﨑准教授 グラフェン 2011 Geim, Novoselov
01/10(金) 為ヶ井准教授 超伝導、量子渦 2003 Abrikosov他

授業の方法

毎回、各テーマを専門とする教員が、交代で講義形式にて授業を行う。出席者は毎回小レポートを授業中に提出する。

成績評価方法

毎回提出する小レポートにより評価を行う。

教科書/参考書

使用しない。

ガイダンス有無

第1回授業日に行う。