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談話会・セミナー

第5回「物質科学セミナーin柏」(講師:塚﨑 敦 氏)


日 時: 11月16日(金)17:00~
場 所: 新領域基盤棟2階 基盤棟共通セミナー室 
講演者: 塚﨑 敦 氏(物質系専攻)
題 目: 酸化物半導体ZnOの魅力

概 要:
本講演では、酸化亜鉛(ZnO)の魅力について、発光素子応用と界面2次元電子系の研究例を通して紹介する。 ZnOは3.37eVの直接遷移型バンドギャップと60meVの励起子結合エネルギーを持ち、古くから単結晶を用いた励起子光学の研究と半導体的な性質について調べられてきた。特に励起子結合エネルギーは量子井戸中で110meVまで増強されることが知られており、紫外線領域での電流注入型高効率発光素子として期待される。しかしながら、p型伝導性制御が困難であり、発光素子実現への障害となっている。それら素子特性の向上に向けた、価電子制御技術の開発について紹介する。一方、MgZnO/ZnOヘテロ接合界面の形成技術はAlGaAs/GaAs系に匹敵する水準に達している。界面の2次元電子はウルツ鉱構造の自発分極に由来し、組成や外部電界によって制御できる。現在までに、最高電子移動度は770,000 cm2V-1s-1に到達し、平均自由行程でも1mmをゆうに越える。酸化物ヘテロ界面で初めて整数量子ホール効果の観測に成功して以降[1]、4年間で約2桁の移動度向上を達成し、明瞭な分数量子ホール効果、特にn=1/3準位の観測も報告されている[2,3]。今後、電子相関の強い2次元電子系として、電子-電子相互作用によるスピン分極率の増大やウィグナー結晶相の観測などが期待される。さらに、構成元素に3d遷移金属を用いたヘテロ構造でも分極効果を適用でき、2次元電子系が形成される。この材料選択の自由度は酸化物特有であり、界面の電子系とスピン軌道相互作用の制御技術へと発展する可能性を秘めている。本発表では、3d遷移金属のコバルトを用いた界面形成と輸送特性についても紹介する。ZnOを基盤とする高品質界面や電荷制御技術の開発によって、電気的、光学的素子応用などへの応用と同時に新規物性の開拓が期待される。
[1] A. Tsukazaki, et al. Science 315, 1388 (2007).
[2] A. Tsukazaki, et al. Nature Materials 9, 889 (2010).
[3] Y. Kozuka, et al. Phys. Rev. B 84, 033304 (2011).