第3回 理論グループ共通セミナー(講師:岡 隆史 講師)
日 時: | 2012年6月26日(火)16:30~ |
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場 所: | セミナー室A/D(工6号館 3階) |
講演者: | 岡 隆史 講師 |
所 属: | 物理工学専攻 岡研究室 |
タイトル: | 「光誘起トポロジカル相転移の理論」 |
【概 要】
二次元Dirac電子系に円偏光を照射すると量子ホール状態になることが理論的に提案されている[1]。この現象は電子状態のトポロジーが光によって変化する「光誘起トポロジカル相転移」あるいは「Floquetトポロジカル絶縁体」の最初の例となっており、実際、レーザー光の照射によってChern数が変化し、光誘起エッジ状態が出現することが示されている[1,2]。Landau準位を伴わないトポロジカルな量子ホール状態についてのHaldaneモデル[3]が知られているが、今回の例では円偏光照射によって動的に同じ量子状態になっている。この現象は多バンド系で広く実現するものであるが、特にゼロキャップ系(グラフェン、トポロジカル絶縁体の表面状態等)で最も大きな効果が得られる。
理論的にはこの提案は線形応答理論を強いAC外場中の光誘起輸送現象に拡張することで行われており、Floquetの定理が重要な役割を果たす。Thouless-Kohmoto-den Nijs-Nightingale(TKNN)公式やLaudauer公式などの輸送理論の中核となる枠組みも自然に拡張されている[1,2]。
実験的には光誘起ホール効果の直接観測やKerr回転などの測定方法が提案されている。
*この仕事は青木秀夫、北川拓也、T.A.Brataas,L.Fu and E.Demlerらとの共同研究に基づく。
[1] T. Oka and H. Aoki: Phys. Rev. B 79, 081406 (2009).
[2] T. Kitagawa, T. Oka, A. Brataas, L. Fu, E. Demler: Phys. Rev. B 84, 235108 (2011).
[3] F. D. M. Haldane: Phys. Rev. Lett. 61 2015 (1988).