第4回 理論グループ共通セミナー (講師:稲岡 創氏)
日 時: | 2011年10月25日(火)17:20~ |
---|---|
場 所: | セミナー室A、D(工6号館 3階) |
講演者: | 稲岡 創 氏 (東京大学情報基盤センター 特任講師) |
題 目: | レナードジョーンズ粒子系による爆発流のMDシミュレーション |
概 要:
沸騰流のような相転移を伴う混相流は、蒸気発生器やボイラーなどさまざまな基幹技術に応用されている重要な現象である。しかしながら、そのような複雑な混相流についての基本的な物理学は未完成のままである。
我々は沸騰流の理解に向けた研究の手始めとして、2種類のレナードジョーンズ粒子からなる系の急激な減圧に伴う爆発的な流れのパターン形成を、分子動力学 シミュレーションにより再現した。このシミュレーションは衝撃波管のモデルに類似した系を用いて行われ、初期状態では2種類の粒子の混合物が仕切りによっ て管状の系の一方の側に高温高圧で閉じ込められており、仕切りの反対側の部分は真空に保たれている。ふたつの領域を隔てている仕切りを取り除くと、混合物 が爆発的な流れとして空間中を広がってゆく。このシミュレーションにより、気泡流、ネットワーク流、噴霧流のような気液2相流に代表的な流動様式を再現す ることができた[1,2]。
さらに、この爆発流の過程では、温度や圧力のような物理量Qを測定し、爆発開始時点からの時刻tと流れの方向に沿って測った座標zの関数として表したもの Q(z,t)は、平衡系の物理学が有効である場合、スケーリング関係Q(z,t)=F(z/t)を満たすことが明らかとなった。逆に言えば、非平衡系に特 有の現象が系内で生ずる場合、このスケーリング関係の破れを利用して、その発生を察知することができる可能性がある[2]。
今回の発表では、爆発流とパーコレーションの間に見られる類似性やスケーリング関係の実例ついて紹介を行う予定である。
[1] H.Inaoka, S.Yukawa, and N.Ito, Physica A 389, 2500 (2010).
[2] H.Inaoka, S.Yukawa, and N.Ito, Physica A. to appear.