第5回 理論グループ共通セミナー (講師:野村 健太郎 氏)
日 時: | 2010年11月30日(火) 16:30~ |
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場 所: | 工学部6号館3階セミナー室A・D |
講 師: | 野村 健太郎 氏(理化学研究所 基幹研究所 強相関量子科学研究グループ 基幹研究所研究員) |
題 目: | 3次元トポロジカル絶縁体における表面量子ホール電流と電気磁気効果 |
Abstract:
近年注目を集めているZ2トポロジカル絶縁体・量子スピンホール系と呼ばれる系は、整数量子ホール効果を時間反転対称性を持つ系に拡張したものとみなす 事ができる。バルクには有限のエネルギーギャップが存在するが試料端にはスピンが逆向きに流れるヘリカルエッジ状態が実現する。この現象は3次元系でも実 現し、その表面の低エネルギー励起状態は質量ゼロの相対論的波動方程式(ディラック方程式)で記述される。
時間反転対称性を破ったトポロジカル絶縁体においては磁気的性質と電気的性質が非自明に絡み合った興味深い現象が多く提唱されているが、それらは表面 ディラック粒子による量子ホール電流に起因する。この系は磁気不純物をトポロジカル絶縁体にドープする事で実験的にも実現できる。講演ではスケーリング解 析に基づき、以下の事を明らかにする。ドープされた磁気不純物によって時間反転対称性を破る乱れが存在するため、表面状態ではすべての一粒子波動関数はア ンダーソン局在し、対角伝導率は消失する。しかしホール伝導率は半整数の量子化値のまま変わらない。これによって、量子ホールプラトー幅は乱れの無い場合 に比べ大幅に広がる。この表面ホール電流の異常量子化は、バルクの立場からは、電場によって誘起する軌道磁気モーメントに起因する効果として解釈できる。本研究は日本学術振興会の最先端研究開発支援プログラムにより、助成を受けたものである。