第2回 理論グループ共通セミナー (講師:宇田川 将文 氏)
日 時: | 2009年5月26日(火)午後4:30~ |
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場 所: | 工6号館1階 大会議室(103号室) |
講 師: | 宇田川 将文 氏 |
題 目: | 遷移金属化合物の重い電子挙動 |
–カゴメ格子上ハバードモデルから分かること–
概 要:
近年、LiV$_2$O$_4$などの遷移金属化合物が示す重い電子挙動に対して関心が集まっている。希土類化合物の示す重い電子挙動については、局在ス ピン系の持つエントロピーが、伝導電子との結合のために、近藤温度と呼ばれる特徴的な温度で解放される、という描像が確立している。一方で、希土類化合物 における局在スピンのようなエントロピーの担い手をあらわには持たない、遷移金属化合物が重い電子挙動を示す理由については、いくつかの理論的提案がなさ れているものの、完全な理解には至っていない。我々は、遷移金属化合物における重い電子挙動の一つの本質的な要素として、幾何学的フラストレーションに注 目し、その役割を調べる目的で、カゴメ格子上Hubbard modelに対して、クラスター動的平均場理論を適用し、不純物ソルバーとして、連続時間量子モンテカルロ法を用いた解析を行った。その結果、フラスト レーションの無い正方格子の場合などと異なり、この系では金属絶縁体転移近傍の広いパラメタ領域で準粒子ピークが安定化し、また、スピン・カイラリティー モーメントの遮蔽に基づく独特の準粒子形成機構が存在する可能性を見い出した。本講演ではこうした準粒子形成に関する詳細な解析結果とともに、磁気ゆらぎ の特徴的なクロスオーバーについても議論する。